からだの豆知識 第4回 『薬とサプリ、ハーブ使い分け -ホリスティックな考えかた-』

2010年10月13日
薬とサプリ、ハーブ使い分け。ホリスティックな考えかた。

人類ははるか昔から病になると身の回りの薬草で自らを癒してきました。
その後ハーブに含まれている多様な成分のうち特定なものだけを抽出して医薬品をつくりました。

(1806年阿片からモルヒネの単離)その後化学的に成分を合成できるようになり(1899年アスピリンの合成)医薬品の進化は今日に至っています。

最近の医薬品はすべて合成かと思いがちですが、キョウチクトウ科のニチニチ草は抗がん剤の原料になり、インフルエンザの治療薬のタミフルの原料が中華香辛料でおなじみの八角だったりするのです。

タミフル

1950年以前我々を脅かしていたのは、伝染病、感染症などの「うつる病気」でした。
その後抗生物質と医学の進歩によりそれらで命を落とす危険はなくなり、我々の寿命は長くなりました。
ところが1950年以降、心身症、生活習慣病など「つくる病気」が増加してきました。
これにより医療の現場は病院から家庭に移行し、医療の主役も医者から患者自身に代わってきました。
寿命がのびたことで昔なら発見されなかった悪性腫瘍や認知症などと長くつきあう必要がでてきました。

われわれは「つくる病気」の時代をどう薬やサプリとつきあったらいいのでしょうか。
「つくる病気」であれあばつくる前に「予防」することができます。

例えばご存知のように癌は遺伝子の突然変異で作られますが我々がこうしている間にも突然変異がおこる可能性はいくらでもあります。
癌にならないで済むのは我々の身体の免疫監視機構が働いているからです。

癌細胞を攻撃するための医薬品はありますが、癌にならない医薬品は残念ながら開発されていません。
癌を予防したければ免疫力アップするといわれる、例えばβグルカン多糖体等のサプリメント類に頼るしかないようです。
またこれらは抗がん剤の副作用軽減にも使用されます。
医薬品、手術、放射線以外の治療を代替療法と呼び、いわゆる近代医学にプラスして患者中心の統合医療をめざす動きが近年欧米を中心にスタートしました。悪性腫瘍やメンタル系の治療の分野、また様々な疾患の予防の部分で選択肢が広がったといえます。

統合医療の時代においては医薬品と、漢方薬、メディカルハーブなどのサプリメントを状況に応じて賢く使いわけていくことが大切です。

医薬品は単一成分で作用が強力で局所に作用を示します。病名に対して処方され
治療の有効性が高い一方副作用などの有害作用の可能性も高くなります。

カプセル

漢方、ハーブなどのサプリメントは多成分でなりたち、症状に対して選びますので病名のつかない不定愁訴に使用できます。
作用もマイルドですが有害作用の可能性も低いと言えます。

漢方、サプリメントなどはその中の生薬やハーブの中の一つの成分が効くのではなく互いの相乗効果できいていきます。
そのときの身体の状態に応じて機能の不調を本来あるべき方向へもっていきます。
相乗効果により1+1が2以上になる。こういう考えをホリスティックといい、統合医療のもとになっています。
身体の状態と成分の相乗効果により効き方が変わるので同じものを飲んでも反応が異なり好転反応の出方も変わります。


ハーブ
例えば風邪で熱がでた時、どうしたらいいでしょうか。体温が下がると免疫力が落ちるので身体は熱をあげてウィルスと戦おうとします。
自己免疫力を信じるなら免疫力アップするエルダーフラワーやエキナセアなどのハーブティで暖めるのもいいでしょう。

漢方であれば葛根湯をのんで布団をかぶって寝れば発汗して身体の芯にこもった熱が出て行きます。
ただ会社をやすんで自己回復力を待つ暇のない人と高熱による脳症の危険がある乳幼児や高齢者はさっさと受診して解熱鎮痛剤や二次感染を防ぐために抗生剤を服用することをすすめます。
日頃からプロポリスなどの抗菌作用のあるもので予防するのもいいでしょう。

もし下痢が続けばウィルスや細菌による感染症の疑いがありますから受診したほうがいいでしょう。
もし下痢と便秘を繰り返したら消化器に腫瘍がある可能性があるので一度検査をしてみたほうが安心でしょう。もし何もなければ過敏性腸症候群という病名がつけられるかもしれません。ストレスが原因とされる下痢は男性に多く女性は便秘が多いそうです。
最近はそれに対する医薬品もでていますが、下痢どめと便秘のくすりを交互に飲むようでは意味がありませんよね。
慢性的に繰り返すようなら腸内環境を元から改善する必要がありますね。腸管免疫に働きかける乳酸菌などのプロバイオティクスが注目されています。

火傷にアロエが効くという民間療法がありますが皮膚が破けたようなところに塗ったためにアロエの雑菌で感染症をおこして酷い状態になってしまうケースがあります。
統合医療の時代、我々の健康を守るのにもいろいろな選択肢があると思います。
治療と予防、医薬品とサプリメントを賢く使い分けていきましょう。
薬剤師K
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