からだの豆知識 第7回『プラセンタの話』

2011年1月8日
女性モニター(35歳~55歳)のほぼ全員の肌水分量アップ、不眠、疲れ、肩こりなどが改善したと言われる鮭プラセンタ(SOP)が話題になったところで今回はプラセンタについて語ってみましょう。

美容に関心のある方ならもうおなじみでしょうが、プラセンタは胎盤のことです。
動物は赤ちゃんを産み落とすと母親が自分の胎盤を食べてしまいます。また漢方では紫河車(シガシャ)と呼ばれ、肝、腎、への作用があるとされ、古来から珍重されていました。楊貴妃、クレオパトラの時代からアンチエイジングのための胎盤食の文化は世界各地で認められています。

胎盤はどんな働きをするのでしょうか?

胎盤は胎児が育つための命綱です。われわれは肺で呼吸することにより心臓からおくられた血液の二酸化炭素を放出し酸素をうけとることができます。胎児は母体の中で呼吸をしませんから肺は機能していません。
胎盤から臍静脈を通って酸素の多い血液が直接胎児の心臓に入り肺を通らずに全身に送られます。そして胎盤にもどりでガス交換され、また酸素の多いきれいな血液が胎児に送られます。

そしてオギャーとこの世に生まれ出た胎児は胎盤呼吸からお別れして肺で呼吸しなくてはなりません。いままであった卵円孔と動脈管という部分が自然に閉じることで初めてわれわれとおなじ肺呼吸がはじまります。

胎盤は母親と胎児の間で酸素と栄養と老廃物の交換数々のホルモンの生産の場で生命維持に欠かせない全てが凝縮されているわけです。


それではなぜ美容に注目されたのでしょうか?

胎児は母体の中で急激に発育します。胎児の身体を作るために胎盤から細胞増殖因子といういろいろな部分の細胞分裂を促す物質が分泌されると言われています。これをとりいれることにより、加齢により細胞分裂が衰えた部分にはたらきかけ細胞の中からの若返り、アンチエイジングが期待されるからです。
また胎盤は胎児を酸化から守り免疫機能を与えます。

ヒト胎盤由来のプラセンタ注射は医薬品として更年期障害、肝機能障害に適応があり、医療機関でつかわれるものです。実際には美容アンチエイジング目的で保険適応外で使われています。
ネット広告などで巷に出回っているプラセンタ注射の値段も様々で、胎盤の由来も、成分もはっきりしないものがあります。
馬、牛豚も含め動物由来のものはBSE以来感染症のリスクを考えサプリとして口に入れるのに抵抗のある方もあると思います。またサプリ一般に言えることですが安いものは原産国がはっきりしません。

より安全で効果のあるプラセンタとして注目されたのが鮭プラセンタ(SOP)です。
鮭は外洋から3~4年で生まれた川に戻ってくる回帰魚です。
メス鮭の産卵は一生に一度、卵と母鮭をつなぐ卵巣外皮にはプラセンタと同様の成分が含まれていることがわかりました。特に注目したいのは構成アミノ酸成分がヒトプラセンタと似ており、特にグリシンとプロリン、ヒトにはないハイドロキシプロリン、が多く含まれることです。
グリシンとプロリンは繊維状たんぱく質であるコラーゲンに多く含まれます。ヒトではプロリンがたんぱく質に取り込まれてヒドロキシプロリンになりコラーゲンを作ります。
グリシンはまた、GABAと同じように抑制性神経伝達物質として注目されています。美容だけでなく更年期のイライラにも期待される成分です。
さて卵巣外皮にプラセンタ様成分が一番多く含まれるのはいつでしょう。
産卵のために川に戻ったころには卵の方に成分が移ってしまいます。川に入る前のタイミングで北海道の根室沖で捕獲された鮭だけから摂れる貴重な成分だそうです。


薬剤師K
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